プロから聞いた逸話

Vol.3 ありえない混泳2

熱帯魚の王様「ディスカス」

このコラムのVol.1では「アロワナ」を熱帯魚の王様と称しましたが、「ディスカス」も熱帯魚の王様と呼ばれる魚です。 円盤のような丸い体型に美しい模様が魅力的なシクリッドの仲間で、南米に広く生息しています。 スズキ目シクリッド(カワスズメ)科シクラソマ亜科シムフィソドン属に属する魚で、学術的には2種 Symphysodon discusSymphysodon aequifasciata または3種 Symphysodon tarzoo(この分類もまだはっきりとはしていないようです)とされていますが、地域ごとの色や模様の違いなどから、アクアリウムの世界では4種類ほどに分類され、更に最終場所などから細かく分けて扱われています。 現地から入荷するワイルド個体を「ワイルド・ディスカス」と呼び、その中でも特に美しい個体には「ロイヤル」という名前が冠され1匹数万円と高価で販売されています。

原種の美しさもそうですが、1960年代にアメリカのJack Wattley氏やドイツのSchmidt Focke氏らが改良品種の作出を始め、美しい品種がヨーロッパや東南アジアを中心に沢山作られるようになりました。 美しい原種のバリエーションや改良品種のバリエーション、また体表から母乳のような栄養素を分泌させて子育てをする特殊な生態など、様々な要素からディスカスは「熱帯魚の王様」と呼ばれているのです。 昔は飼育方法が確立していないことから難易度が高い魚として扱われていましたが、種類にもよりますが実際には通常の熱帯魚と同じように飼育してもうまくいくことが多いようです。

改良ディスカス
改良ディスカス Symphysodon aequifasciata ver. では花束のように様々な色彩の品種が作出されています。

アマゾンの人食い魚「ピラニア」

凶暴な人食い魚として一般に知られる「ピラニア」も南米に広く分布するポピュラーな熱帯魚です。 カラシン目セルラサルムス亜科セルラサルムス属またはパイゴセントラス属に属する牙魚を指し、アマゾンに沢山の種類が生息しています。 恐怖の魚として扱われていますが、実際には臆病で餌を食べるとき以外は大人しく、実際飼育しているところに脅かしたりすると怯えて暴れて水槽のガラス面に激突して怪我をしたり、水槽から飛び出したりして死んでしまうことがある程です。 しかしその牙は極めて鋭く、ひとたび噛みつかれると肉が抉り取られる程の大怪我をしてしまいます。 臆病とはいえ肉食魚ではありますから、別の種類の魚を積極的に襲い捕食します。 その恐ろしさばかりがよく語られますが、ピラニア・ナッテリー Pygocentrus nattereri やダイヤモンドブラックピラニア Serrasalmus spilopleura 、ラインノーズ・ピラニア Serrasalmus geryi など、星屑のように輝くウロコが美しい種類も居て、観賞魚としての人気も高く、ファンの多いジャンルになっています。

ピラニア
最も有名なピラニア・ナッテリー Pygocentrus nattereri。恐ろしい顔とは裏腹に、星屑のように煌めくウロコがとても美しい。しかし、シクリッドと違いカラシンは話が通じない感じの独特の怖さがあります。

ディスカスとピラニアの混泳

この熱帯魚界を代表する2種はジャンルは全く違いますが、それぞれ同じ地域に住むアマゾンの熱帯魚。 普通に考えると混泳なんて絶対にありえないのですが、なんとそんな混泳がもしかしたら可能かも知れないという話があるのです。 ディスカスはシクリッドの仲間で最大では体調20cm程になる中型種です。 シクリッドの仲間は一般的に縄張りを主張し、その縄張りに近く魚を追い払おうとする性質があります。 しかし、ディスカスはおちょぼ口ですから、攻撃するとは言っても一撃で相手を殺してしまうようなものではありません。

一方、ピラニアのほうは鋭い牙を持っている訳ですから、一撃で魚のボディーが抉り取られてしまい致命傷になってしまいます。 当たり前ですが、他の魚と一緒に飼うなんてことは普通はしませんし、ピラニア同士でも混泳には覚悟が必要です。

しかし、大型のディスカスにそれを超えないサイズのピラニアの混泳ならもしかしたら成功する可能性があるのかも知れませんね。 臆病なピラニアはディスカスに小突かれると逃げそうですし、ディスカスは極端に体高があるため横から見ると大きい魚に見えますから、襲われにくいということがあるそうです。 実際、プレコやドラスのような堅強なナマズ類なら混泳させている人もいるようです。やはりヒレは齧られてしまうことが多いようですが。

現地アマゾンを再現したレイアウトにディスカスとピラニアが泳いでいるなんて、想像しただけで素敵な水景ですが、1匹数万円するワイルドディスカスの大型個体をピラニアと混泳させる勇気はなかなかないですね。

ピラニアとディスカス
いつか実現してみたい夢の共演(写真は合成です!)

アクリム:松端秀明

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